第2回教室『学び合い』フォーラム2006質問と回答

質問→赤坂先生へ

001 今日のお話は大変興味深く、勉強になりました。私は新潟市立○○小学校で講師をしている○○と申します。教師生活が一年にも満たず、日々悪戦苦闘の毎日の中で、自分の引き出しを増やしたいと思い、参加させていただきました。先生のおっしゃっていた「子どもを信じる」という言葉はとても大切だと思いながら、子どもとの関係づくり、学びの環境づくりができていないため、クラスがうまく機能していません。2学期からはもっと新しいことにチャレンジしてみたいと思っています。そこで、「クラス会議」「アドラー心理学」「Q-U」について知ることのできる書籍を教えていただけないでしょうか。私もいつかは「クラス会議」を開き、みんなが満足感を得られるようなクラスをつくりたいと思います。(小学校教師)

回答(赤坂先生より)

ご質問有り難うございます。
私は、引き出しはあっても、がらくたばかりで役に立ちません。
日々、試行錯誤の連続です。
これからもよろしくお願いいたします。

○アドラー心理学関係
野田俊作・萩昌子 クラスはよみがえる 創元社

○クラス会議関係
ジェーン・ネルセン他 クラス会議で子どもが変わる コスモスライブラリー

○Q-U
学校出入り教材屋さんか、図書文化社に問い合わせて、サンプルと手引き(500円く
らい?)を入手されるといいでしょう。
河村茂雄編著 グループ体験による タイプ別 学級育成プログラム 小学校編 図
書文化

なお、プログラムに関するお問い合わせは、赤坂のアドレス
shinji-akasaka64@piano.ocn.ne.jp
まで、お願いいたします。


質問→赤坂先生へ

002 赤坂先生のクラス会議プログラム(スクリーンに写っていたもの)を教えていただきたいです。又は参考の本を教えてください。

回答(赤坂先生より)

プログラムに関心をおもちいただいて有り難うございます。
参考文献は
○クラス会議関係
ジェーン・ネルセン他 クラス会議で子どもが変わる コスモスライブラリー

プログラムは赤坂までお問い合わせください。
shinji-akasaka64@piano.ocn.ne.jp
003 赤坂先生の実践について。とても興味深く聞かせてもらいましたし、よく勉強されていることに感心していたのですが、先生の実践は、学校(学年)全体で取り組んでいるのですか?それとも先生のクラスだけですか?なかなか他の人に理解してもらえないことを実践しようとするのは難しいものかと思いまして・・・。うまく質問できていないのですが、「よい」と思ってやろうとすることを、他の人の「大変だ」「面倒だ」で実践できないことが多いのです。

回答(赤坂先生より)

私のクラスだけだと思います。関心をもたれた方には、プログラムをおわけしていま
す。学級経営の方法は、いろいろあっていいと思います。自分のやり方がベストだと
は思っていません。今は、クラス会議の効果を実感していて、子どものためになると
思っているので実践しています。関心をもってくださってうれしく思います。



質問→西川先生へ

004 卒業後の進路実現を目標とすると、なかなか「はっきりと分かる学び合い」というのは取り入れづらいと思うのですが(特に進学校の国数英は)、皆で同じ目標に向かう姿勢を見せ合うことも学び合いなのかなぁと考えていました。どうなんでしょう?接し合いや話し合いがないと「学び合い」とは言えないのでしょうか?

回答(西川先生より)

学び合いこそ、学力向上の切り札である、ということは
今年の10月~12月に出版予定の新刊書をお読み下さい。

ここでは簡単に回答いたします。
多くの方が、人間関係と学力を分けているようです。
でも、想像してください。
職員同士の人間関係がぎすぎすしている学校が良くなると思いますか?
馬鹿げています。
人間関係が良好であるとき、課題達成もなされます。
また、人間関係が良好の職員同士が、職員旅行をしたときを想像してください。
その飲み会で、「学校の話題を絶対に話しては駄目」ということになったら、どうなると思います?
職員集団にしても、クラス集団にしても、人工的につくられた集団です。
そこには凝縮する必然性はありません。
実は、その集団に課題があるとき、まとまることが出来ます。
だから、「学力はさておき、人間関係作り」というのはナンセンスです。
教科学習という軸を失えば、クラスはまとまるわけありません。

別の説明をしましょう。
高校・大学の時、難しい講義のテスト勉強をどのようにしましたか?
おそらく、友達同士であつまって勉強したのではないでしょうか?
何故、そんなことしたんですか?
それは、それが勉強になるからでしょうね。
そして、そんなことしろと、教師から強いられましたか?
そんなこと無くても、それが有効だと知っていたでしょ?

リンカーンは、「多数の人を少しの間騙すことはできる。 少数の人を長い間騙すこともできる。 しかし、多数の人を長い間騙すことはできない。」と述べました。

おそらく、クラスの一部にとっては有効である、人間関係を無視した学力向上の方法はあるでしょう。
また、クラスの全員が短期間なら耐えられる、人間関係を無視した学力向上の方法はあるでしょう。
でも、それらは塾・予備校ではOKでも、学校教育では無効です。

教師が進学の意味を自分の自己実現のためであることを語ったら。
そして、足を引っ張り合うのではなく、協力することの有効性を語ったら。
そして、「全員が、自分の夢に向かって、希望する学校に進学出来るようになろう!」と語ったら。

きっと、教師が学び合いを強いなくても、我々が理想とする学びの姿を子どもたちは選択するはずです。
だって、教師にとっては子どもの進学は「人ごと」であるのに対して、子どもにとっては自分の人生に関わることなのですから。



質問→鈴木先生へ

005 鈴木さんへ、集団随伴性についてもっと知りたい。

回答(鈴木華奈子先生より)

○特別支援教育の研修会で紹介されました。
集団随伴性とは、標的行動の増加・減少をねらったものです。
集団への強化が個の行動の強化を促すということです。
○編者注:鈴木華奈子さんの考えはhttp://blogs.yahoo.co.jp/kireina_himawari/6447090.htmlに紹介されているものと考えてよいようです。



質問→江川先生へ

006 江川さんへ、可視化・・が今ひとつ分かりにくい。今回の授業で何と何が可視化だったのか明らかにしてほしい。理科以外でどう可視化しているのか知りたい。

回答(江川先生より)

1 可視化について
 授業において可視化が担う役割は,「教師が教えるのではなく,教えられる他者を
紹介する」ことである。
具体的には,
  (1)子どもの質問に直接応えない。
(2)よい情報源となる子どもが誰かを知らせる。
(3)わざと大きな声でいう。
これらによって,教師一人では対応しきれない子どもたちの多様性を大切にしてい
ける。

2 本時での「可視化」について
 ・班の全員が観察できていることの紹介
 ・記録の素晴らしさの紹介
 ・顕微鏡の使い方のよさの紹介

3 理科以外での「可視化」について
  「教師が教えるのではなく,教えられる他者を紹介する」という可視化の役割は
 教科を問わず有効であると考え実践しています。



質問

007 グループは作るのか。(近くの人と相談しなさい、とよく言うのですがそれは学び合いとは違うのか)

回答

○「学び合い」に決まった形体はありません。教師の役割は「学び合いを阻害しない環境を作る」ということです。学び合うか学び合わないかは子どもたちが決めることです。
ただ、子どもたちのそれまでの学習経験で、「学び合ってはいけない」とすり込まれている場合(「隣の人と話さないで自分で考えなさい!」と言い続けられているような場合)、グループを作ることで、学び合いがしやすくなるということはあります。
学び合いの阻害要因がない場合(子どもたちの気持ちや、学習環境において)は、グループを作らなくても学び合います。よって、グループを作るのか、作らないのかという質問に対しては、「目の前の子どもたちによります」ということになります。

文責:片桐史裕